審判前の保全処分 [しんぱんまえのほぜんしょぶん]
審判申立から終局審判が効力を発生するまでの前に 、事件関係者の財産が散逸してしまわないように、仮差押えや仮処分等の必要な処分を裁判所に命じてもらう制度があります。仮差押えは、財産分与や婚姻費用、養育費の支払等金銭の支払いを求める審判の申立をしている場合、これらの権利の強制執行を保全するために行う手続です。
たとえば不動産の仮押えが命じられると、その旨の登記ないし強制管理がなされます。また、債権の仮差押えが命じられると、第三債務者(預金債権を仮差押えした場合、銀行が第三債務者にあたる)は、債務者(審判の相手方)への弁済が禁止されます。
仮処分は、係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分とに区別できます。
係争物に関する仮処分は、たとえば財産分与の審判の対象となっている不動産が売却されることを防ぎたい場合等に行う手続をさし、処分禁止の仮処分や占有移転禁止の仮処分等があります。
たとえば不動産の処分禁止の仮処分が命じられると、その旨の登記がなされます。仮の地位を定める仮処分は、婚姻費用や養育費の仮払い、子どもの引き渡し等を受けるために行われる手続です。たとえば婚姻費用の仮払が命じられますと、仮処分命令を債務名義とみなして、審判が出る前の段階で暫定的に婚姻費用の支払いが命じられます。
このように便利に見える審判前の保全ですが、保全が認められるためには、本案審判(婚姻費用、養育費の審判等の本体となる審判)が認められる理由と財産の保全の必要性があります。また、審判前に保全の申立をした場合、保全の種類によっては申立人が担保を立てるよう命じられる場合があります。