人身保護請求 [じんしんほごせいきゅう]
ある者の身体の自由が侵害されている場合に、その侵害を排除することを求める請求をいいます。たとえば、別居中の配偶者もしくは離婚した元の配偶者が勝手に子どもを連れて行ってしまったような場合に、この請求がなされることがあります。手続は迅速で、審問は請求日から1週間以内に開かれ、判決は審問の終結から5日以内に言い渡されます。
このような請求に関して、判例は、「両親ともに共同親権者である場合(離婚前)は、拘束者による幼児の監護・拘束が権限なしにされていることが顕著であるといえるためには、その監護が請求者の監護に比べて子の幸福に反することが明白であることを要する(最判平成5年10月19日民集47巻8号5099頁)」としています。したがって、離婚前に配偶者が子どもを連れて行ってしまっても、その配偶者が虐待などをしていない限り、人身保護請求によって子どもを取り戻すのは難しいと考えられています。
他方、判例は、「子の監護権を有する者が監護権を有しない者に対し、人身保護法に基づき幼児の引渡しを請求する場合には、幼児を請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、拘束の違法性が顕著であるというべきである(最判平成6年11月8日民集48巻7号1337頁)」としていますので、親権や監護権がない者が子供を連れて行った場合には、この請求により子どもを取り戻すことができる可能性は十分にあるということができます。